帯状疱疹という病気を知っていますか?皮膚に赤い発疹(中心に水疱をつくる)ができて強い神経痛様の痛みを伴う病気です。そう頻繁にお目にかかるものではありませんが、私の診療所でも年に5~10人ほどは診断及び治療する病気です。ときには、痛みが先に現れるため、神経痛と診断され整形外科で治療を受けているうちに発疹が見つかり、帯状疱疹と気付かれる場合もあります。
この病気の原因はウイルスです。しかも水疱瘡(みずぼうそう、水痘)を引き起こすウイルスと同じウイルスです。名前を水痘・帯状疱疹ウイルス(varicella-zoster vurus: VZV) といいます。
帯状疱疹はなぜ起こるのでしょうか。子供のころに水疱瘡にかかると、治ったあともウイルスが神経(脊髄感覚神経節、三叉神経節)の中で眠って(潜伏感染)います。年をとったり、疲れすぎたり、他の病気で体が弱ったりすると、ウイルスが活性化(元気になり)して帯状疱疹を引き起こすとされています。
つまり、水疱瘡にかかった人は、みな帯状疱疹にかかる可能性があるのです。しかも高齢者ばかりでなく、すべての年齢層に起こります。
何を隠そう、かくゆう私も30歳のころにこの病気にかかっています。ちょうど聖路加病院でしごかれていたときでした。発疹は5個くらいで軽いものでしたが、それでも痛みは強く、まさに針で刺されるような痛みでした。完全に痛みが消失するまでに2か月かかりましたが、これは本当に軽い方で半年ほど痛みが残ることもあります。
また一生涯痛みが消えない例や、顔面の場合は神経麻痺も起こるため、まぶたを開くことが出来ない場合もあると言われています。
このような、やっかいな帯状疱疹、しかも誰にも起こる可能性のある病気を予防することが出来ないでしょうか。
2005年、アメリカの研究者から、ある有名な論文に帯状疱疹の予防効果がある方法が発表されました。それは帯状疱疹ワクチンです。これを60歳以上の人たちを対象にして調べたところ、あきらかにワクチンの効果が認められたのです。もちろん100%予防は出来ませんが、ワクチンを接種すると帯状疱疹にかかる率が有意に減り、かつ後まで続く神経痛の程度を軽くする効果が証明されました。