2年ほど前から前立腺癌が話題になり、最近はこのPSA検査が注目されています。
PSA:prostate specific antigen は前立腺特異抗原の略です。一種の蛋白質であり、いわゆる腫瘍マーカーといわれるものの一つです。血液検査でこの蛋白質を測定することにより、前立腺癌の早期発見または治療効果の判定に用いられています。元来、この手の腫瘍マーカーは、癌が末期状態にならないと増加してこないため、治療効果の判定には有意義でしたが、癌の早期発見にはほとんど役に立ちませんでした。
しかし、このPSAは前立腺癌の早期から増加することが多いため、癌の早期発見、早期治療に非常に役立つ検査と認識されてきております。また検査も血液検査ですから、特別な装置は必要とせず、また専門家でなくても検査可能という点が大きな利点であり、専門家である泌尿器科よりも、むしろ高齢者を多く診ている内科医に重要な検査と考えられます。
当院では、主に65歳以上の老人検診を受ける場合に、ご本人にこの検査を説明し、了承された方のみ検査を行っております。そして、異常値の見られた方には、すぐに泌尿器科を紹介することにしています。今までに、かなりの患者さんを紹介し、不幸にも癌が確定された方も多くいらっしゃいました。
しかし、癌が早期であった場合が多く、手術や放射線治療などで改善し元気に過ごされています。また、かなり進行していた癌の方の場合も、薬物療法で、うそのように軽快(PSAが減少)しています。
もともと、この前立腺癌は進行が遅く、また薬の効果も、他の癌に比べ物にならないほど期待できる種類の癌です。ホルモン薬も非常に有効です。男性は年をとるにつれ、間違いなく前立腺の肥大が生じ、一部の人には前立腺癌が発症してきます。長生きすればするほど前立腺癌になりやすくなると言っても良いと思います。男と生まれたからには、また長生きしてきたからには避けてとおれない病気と言えなくもありません。症状がないのに検査のためだけに泌尿器科に受診するのは抵抗があると思われます。
だからといってあきらめる必要はありません。どこの医療機関でも簡単にPSA検査ができるのですから。この検査は前立腺癌が確定されている方、または疑いの強い方には保険適応がありますが、検診目的の場合は自費扱いとなります。だいたい3000-3500円程度です。1年に一回で安心が買えれば安いものです。
前立腺癌の罹患率は20年前の2-3倍に増え、今後の25年間で最も増加率の大きい癌であろうと予想されています。1997年の統計では、年間死亡者数は7000人を突破しています。
このような性質の良い癌で死ぬのはもったいない。50歳を超えたら毎年PSAをチェックしましょう。