昨年(2007年)は麻疹(はしか)が流行しマスコミを賑わせました。
世界の先進国からも不思議に(あきれられた?)思われました。「はしかなんていう病気は子どもが罹るもので、昔は皆経験しているんだからどうってことない、なんでそんなに騒ぐのかな」と思われた高齢者の方々もいらっしゃると思います。ところが、いろいろ調べてみますと結構大変な病気なのです。
1950年代には麻疹により3,500人程度が死亡していました。
最近ではかなり減少し、報告によると20人程度ともいわれています。この死亡原因の多くが肺炎と脳炎です。
小児の場合は肺炎が多く、成人の死亡原因としては急性脳炎といわれています。昨年は半年の間に麻疹脳炎が9例報告され、10代が4人、20代が5人でした。麻疹脳炎の致死率は15%、治っても20-40%に重度の後遺症が残ります。意外と思われるでしょうが、現在小児の麻疹は少ないのです。
この理由は、1歳と小学校入学直前のワクチン接種がしっかり行われているからです。逆に、現在10代、20代の人はワクチン接種を受けていないか、受けていても10年以上経過して免疫が低下してきた人が存在するため、麻疹に罹る危険性があるのです。
厚生労働省は今年の4月1日から、中学1年生と高校3年生に、無料で麻疹・風疹混合ワクチンの接種を受けられる決定をしました(5年間の時限措置)。これにより、WHOの2012年までに麻疹を排除する目標を達成しようとしています。これはすばらしいことですが、問題はこの年代の学生が本当に接種するかどうかです。親、教師、医者、マスコミなどが協力してキャンペーンを続ける必要があるでしょう。
また、その学年以外の人たち、特に10代、20代の人たちも、積極的にワクチン接種を受けることをお勧めします。診療所に相談して下さい。麻疹だけのワクチン、麻疹・風疹混合ワクチンで費用は異なりますが(おそらく6,000円-10,000円程度)、病気になる危険性を考えれば、ワクチン1回だけでいいのですから安いものではないでしょうか。
なお、過去に明らかに麻疹に罹患された方、また明らかにワクチンを2回接種された方は追加のワクチンは必要ないでしょう。また、昨年は麻疹の抗体を調べたい人が殺到しました。高い抗体価を有している方は新たなワクチン接種は必要ないかもしれません。いずれにせよ、麻疹(はしか)をばかにしないで真剣に向かい合いましょう。