ほとんどがタバコが原因で起こります。60歳をすぎて息切れを自覚するようになってしまうと、もう病気は治らないと考えてください。そして、これ以上悪くしない対策をたてることが大事です。呼吸器医と相談してください。くれぐれも体を鍛えようと階段の上り下りなどに励まないように。心臓をわるくしてしまい、さらに呼吸困難が強くなってしまいます。息切れを感じない程度にペースをおとして散歩を続けるのがベストです。治療の基本というより、増悪させないための唯一の手段は禁煙です。これ以外にないと考えて間違いありません。その他、少しでも役に立つ方法として呼吸法があります。これは病気を治すものではなく、息切れを少なくさせる方法と考えてください。
つまり、現在の病に陥った肺を最大限に働かせるための方法です。肺気腫では、息が吐き出しにくくなります。患者さんの訴えでは、息が吸いにくいと表現されることが多いのですが、実際には、息が吐き出せないために、その後息が吸えなくなるのです。たとえば、スポンジに水を含ませる場合を考えてください。
しっかり絞った状態からでないと十分な水が含まれません。それと同じなのです。ですから、息を吐き出しやすくできれば、それだけ息が吸いやすくなり、患者さんの息切れは軽くなるというわけです。
正常な場合、おもいきり息を吐き出すときに要する時間は、せいぜい2~3秒ですが、肺気腫の患者さんの場合は、完全に吐ききるまでに5~10秒もかかってしまいます。それでもまだ完全に吐ききれないわけです。
そして、さらに不思議なことに、おもいきり早く息を吐き出そうとすればするほど(たとえば肺機能の測定で、一秒間にどれだけ吐き出せるかを調べる場合)、吐き出せなくなります。
逆に、ゆっくり吐き出せば、時間はかかるものの量が多く吐き出せるのです。ですから残されている肺の機能を有効に使うには、まずゆっくり吐き出すことが肝心です。それと「口細め呼吸」といわれる方法も役立ちます。これは口をすぼめて、「ふ」または「ほ」と発音するような口にして、ゆっくり吐き出す方法です。ちょうど、遠くの蝋燭の火を、そおうっと消そうとするときの仕草に似ています。
これに、肩の力を抜いて腹式呼吸を併用すれば完璧です。長い時間をかけて、静かに吐き出すのです。お腹に手を当てて、吐き出すときに軽くお腹を押すのも役立ちます。しっかり吐き出しさえすれば、次の瞬間、自然と楽に息が吸えるのです。