とてつもない波が押し寄せてきました。新型インフルエンザです。1週間ほどの間に、これだけ話題になった感染症は私にとって初めての経験です。たまたまハワイに遊びに行っていたスタッフも、現地ではまったく話がなく、成田で初めてこの話題に接したと言うほどです。マスクの需要もかってないほどだと聞きます。
いろいろな情報が飛びかっています。大臣は冷静に対処してほしいといいますが、具体的にどうすればいいのか、おそらく当事者も現段階では判断できずにいるのではないかと考えます。現場の医師として、まず伝えたいことがあったので報告したいと思います。
まず、疑いのある患者さんにインフルエンザの簡易検査をするといわれています。海外から到着した飛行機の中で行われている検査です。これは、われわれが季節性のインフルエンザの際に行う検査とまったく同じです。けっして特別なものではありません。この検査の問題点を正直に述べたいと思います。
この内容は、普段から患者さんに話している内容ですが、あまりご存じない方もいらっしゃるかと思い、正確な情報を伝えたいと思います。
多くは鼻の奥に綿棒のようなものを挿入し、その分泌物を検査します。その中に、ウイルスがある程度の量含まれていれば断定できます。このある程度が問題です。
例えば、38度以上の発熱がある人を検査しても陰性であり、とりあえずインフルエンザではないと診断された方が、翌日も高熱が持続するために医療機関を受診し、再検査をすると陽性になることがあります。これは、日常よくあることです。
どういうことかと申しますと、発熱してからの時間が短い場合、ウイルスの量が少なく検査でひっかからないからです。実際には、早くても発熱後8時間から12時間、確実にはもう少し時間が経過した場合は、かなり信頼できる結果が得られます。ですから、飛行機の中で、仮に発熱していたからといっても、状況により検査結果は変わるのです。
要は、鼻水の中に十分ウイルスがいるかどうかなのです。いつから発熱したかも問題ですが、経験上アレルギー性鼻炎を有している方は鼻水の量が多く陽性になる確率が高いと感じています。あくまでも、われわれ現場の経験ですが。
すなわち、何を言いたいか、もし帰国後発熱した場合、とりあえず最寄の保健所に電話し、指定された医療機関でこの簡易検査を受けることが大事ですが、先に申したように発熱後すぐには結果が出ないことが多いということです。すぐに、かかりつけの医療機関に受診したい気持ちはわかりますが、そうするとパニックになります。
なぜなら、待合室にいる全ての人に感染させる可能性が高いからです。よく分からない場合も、受診せずに、とりあえず医療機関に電話することです。これがポイントです。
当院では、診療所の入り口に、同様の内容のポスターを掲示しています。インフルエンザの簡易検査キットも在庫がありません。あまりにも需要が多く、たぶん発熱外来を行う医療機関に優先的に回しているからだと思います。
万が一、受診された場合は、申し訳ありませんが待合室の外で待機していただき、保健所と相談のうえ、対応を検討することになります。
つまり、発熱外来を行っている医療機関にご紹介することになりますので、とにかく保健所、保健福祉センター、ないし当院に電話でご相談くださることを強くお願い申し上げます。