インフルエンザ治療薬としては、タミフル、リレンザが使われていますが、今回新たに2種類の治療薬が承認され、現在実際に使うことができるようになりました。なんと両者とも国産品です。すごいですね。
一つ目は「ラピアクタ」一般名はベラミビルです。シオノギ製薬から発売されました。細かいことを言うとアメリカの BIOCRYST という会社と提携した純国産品と呼ぶべきものですが、シオノギが治験を行い販売を開始したものでアメリカではまだ使えない状況ですから、国産品といってかまわないでしょう。この薬は、なんと注射薬です。しかも原則1回の点滴で済みます。発症後48時間以内に医療機関でインフルンザと診断されたら、この薬を入れた点滴を1回だけ行えば、その24時間後には約半数の人が37度以下の体温になるという代物です。
そもそも、このラピアクタは今年の春には発売されていましたが、インフルエンザ自体がはやらなかったこと、また注射薬ということで副作用の心配があったこと、及びタミフル5日分より1.8倍ほど高価であることなどで、あまり使われなかったようですし、またマスコミにも登場しませんでした。この冬には話題となるはずです。今のところ小児には適応がありませんので高校生以上となりますが早晩小児適応となりそうです。この薬は一般の成人より、抵抗力の弱い小児や老人、基礎疾患を有する人に投与される価値があるものと思います。副作用は4分の1の人に認められるそうですが大半が下痢ということです。一応薬価は300mgが5,792円です。
二つ目は「イナビル」です。第一三共から10月に発売された最もホットな国産品です。この薬は吸入剤です。リレンザと同様に吸い込むだけですが、この薬の特徴は一度の吸入で済むことです。リレンザのように5日間吸入する必要はありません。発症後48時間以内に医療機関でインフルエンザと診断されたら、この吸入薬を一度だけ吸い込むだけで治療が終了するのです。場合によっては調剤薬局さんで薬を受け取ったら、その場で吸入して終わりということになります。これもまた便利です。細かくなりますが、一度の吸入といっても吸入する回数は10歳以上が4回、10歳未満が2回吸入することになります。それでも、その場で一度で終了です。薬価はラピアクタより安くタミフルより高くなります。
いずれもインフルエンザA及びBに効果があり、もちろん新型にも効果があり、その効果の程度は少なくともタミフルと同等か、場合によっては上回る効果という結果が出ています。またラピアクタでは、鳥インフルエンザにも効果があると言われています。
当院では、すでにこれらの薬を使える状態にしてありますが、実際の治療にどの薬を選択するか、正直頭が痛いです。贅沢な悩みですね。