アメリカで使われている帯状疱疹ワクチンは、60歳以上の約3万8千人の人たちでテストされ、その有効性が認められたため、2006年5月にFDAに承認され、2008年からは60歳以上の成人に、このワクチン接種が勧められています。
また、この帯状疱疹ワクチンはEU、カナダ、オーストラリア等においても認可されています。
しかし残念ながら日本では、このワクチンはその存在さえ知る人が少ないのが現状です。
ところで、この帯状疱疹ワクチンとはどんな内容なのでしょうか。簡単にいうと、現在日本で使われている水痘ワクチンとほとんど同じ成分です。その成分は、弱毒化した水痘帯状疱疹ウイルスです。
皆さん驚かないでください。世界中で使われているこの水痘ワクチンは、そもそも日本の科学者、高橋理明先生が苦労に苦労を重ねて発明、作り上げられたものなのです。1971年から研究が開始され、1983年にWHOに認められ、1984年にはヨーロッパ数か国で許可されています。1986年には日本で、1995年からはアメリカでも使われています。
つまり、日本人が開発したワクチンを、外国ではいち早く帯状疱疹の予防目的にも使い始めているのに、日本ではまったくその動きがないということです。厳密に言うとアメリカで使われている帯状疱疹ワクチンは、日本の水痘ワクチンと若干異なる点がありますが、その主となる成分は高橋先生が発明した弱毒生水痘ウイルス(岡株)であり、そのウイルス量もほぼ同じだそうです。
ですから日本でも帯状疱疹予防の目的で、現在使われている水痘ワクチンを、主に希望される高齢者に接種する価値は十分にあると考えます。どうも日本人はワクチンアレルギーがあるようで、ワクチンの副作用を過度に意識するきらいがあるようです。でも、肺炎球菌ワクチンのように、その存在を認識すると、多くの高齢者は接種を希望されたことも事実です。したがって。厚生労働省から、帯状疱疹を予防するワクチンがあるよ。自費になるけど希望者は接種してかまいませんよ。という通達があればいいのになあ、とつくづく感じています。
まず副作用は心配しないでよいでしょう。なぜなら、小児の多くが現在接種されているワクチンなのですから。
体の抵抗力が低下すると、帯状疱疹が起こりやすいと始めに述べましたが、医学的な表現では、水痘ウイルスに対しての細胞性免疫が低下すると、発症するといわれています。細胞性免疫の説明は複雑なのでここでは触れませんが、高橋先生の研究によると、成人に水痘ワクチンを接種すると明らかに水痘ウイルスに対する細胞性免疫が増加するそうです。かなりの予防効果が期待されます。
最後に、ちょっと面白い話を加えます。
水痘の小児を診ることが多い小児科医と、その機会がほとんどない精神科医での帯状疱疹の発症率を調べた報告があります。それによると、精神科医の方が、小児科医より1.8倍高い頻度で帯状疱疹を発症したそうです。
つまり、このウイルスに暴露されることにより帯状疱疹の発症が低下するという結果になり、この臨床観察からも水痘ワクチンの接種が帯状疱疹の発症を低下させることが予測されます。