「イラク戦争が予想外に早く終結したことと、中国からのSARS情報隠しが明るみに出たことなどから、この病気に関するマスコミの取り組み方はかなり力が入っているようです。確かに毎日患者数と死亡者は増えており、日本に上陸?するのも時間の問題と考えられます。
3月の時点から新たに加わった情報として、
(1) | 中国とくに北京、最近では上海にも、さらに台湾でも感染者が見つかったこと。 |
(2) | 原因とされる微生物は新型のコロナウイルスであり、飛沫感染(くしゃみ、鼻水などに大量に含まれるウイルスを吸いこむことにより感染するタイプ)の可能性が高いこと。 |
(3) | 死亡率は15%ぐらいに上昇、とくに高齢者の死亡率は50%という報告が出てきたこと。ただし、不思議なことに新生児や小児では死亡率が低い傾向にあること。 |
(4) | いまだに確立した治療法がないこと。 |
(5) | この病気の対策として、政府は感染者のいる地域への渡航を自粛するよう呼びかけていること。また厚生省は疑いのある患者を見つけた場合は厳重に隔離するよう医療機関に通達していること。 |
などです。
内科医および呼吸器科医として、このウイルスの感染機序がインフルエンザや一般の風邪のような空気感染ではなく、結核のような飛沫感染らしいということを耳にして少しホットしています。
皆さんは結核と聞くと、さぞや怖がると思いますが、病気の移り方から考えると、空気感染は簡単に蔓延しやすい最も怖い感染機序であり、だから例えばインフルエンザなどでは一冬に何十万人という単位の感染者が出るわけです。いくらマスクをかけてもウイルスは簡単にマスクを通過して感染が成立してしまうのです。逃げようがありません。その点、飛沫感染はかなり濃厚に接触しないと、例えば目の前でハクションされて唾液が飛び散り、それを吸いこんでしまうことにより多量の微生物を摂取してしまい発症するというような感染ですので、空気感染とは比べものにならないほど感染率は低いのです。また飛び散る唾液や鼻汁を防ぐ意味ではマスクが効果的です。
残念ながら今のところ特効薬がないので、万が一感染した場合は個人の免疫力に頼るしかありません。前回述べたように、十分な睡眠をとり規則正しい生活を送ることが重要と思われます。
各医療機関にはSARSに関する通達が頻繁に届いております。
その内容は、もっぱら疑いのある感染者を早く見つけて隔離する方法についてです。治療法がないので、病気に罹らないまたは病気を広めない方法に重点が置かれるのは仕方ないのですが、まるで凶悪犯を捕まえて投獄させるようなイメ-ジです。これが医者の仕事なのか?と首をひねりたくなりますが、じゃあどうしたらいいかと問われても答えが出せません。
川崎市では、疑いまたは可能性ののある患者さんの受入先は、原則として北部が川崎市立井田病院、南部が川崎市立川崎病院と決まっています。心当たりの方は、まず上記の病院または最寄の保健所(旧)に電話してください。直接病院に受診されると大パニックになってしまいますから。何はともあれ、危うきに近寄らず。空港や外国人の集まる地域に出かけるのは止めましょう。